「こっちを向いてしゃべるように」

青沼陽一郎氏の「麻原法廷物語」を見て、
オウム真理教裁判の様子に驚いた人は多かったと思います。
厳粛な裁判の場を激情のまま、「劇場」に変えてしまった。
私も驚きました。



さて、この裁判に33回(いやもっとかも。正しい数字がぱっと出てこない)
出廷した中川智正さんがこの場にいたら
どんな感じになるのでしょう。

例えば、第28回公判(1997年2月28日)

出典は



中川智正被告は麻原裁判の弁護側証人として出廷でした。
この人は、裁判中、紺色のジャケットにグレーのスラックスという
きちんとした服装をしています。

淡々と宣誓したあと、「本題」
検察官:「あなたは坂本弁護士殺害に関与しましたか」
中川:「今日それについてはお答えできません」
検察官:「その理由は」
中川:「自己の裁判で有罪判決を受ける恐れがあるからです」
検察官:「将来もするつもりがないということですか」
(中川、少し考えこみ)「もう一度お願いします」。
中川:「ええと、全くないというわけではありません。弁護士に相談の上」
検察側がここで、1995年9月26日から10月11日までに取られた検察官調書8通を1通ずつ示す
検察官:「末尾の署名、指印は証人がしたものですか」
中川:「それも今日は確認できません。」
※これを8通あるため、8回くりかえした。

麻原の主任弁護人:「このまえはいくつか話してくれたんですか。今日は話してもらえないんですか」
麻原:「話せばいいんだよ」
(中川、下を向いて困ったように黙り込む)


弁護人:「今日は、証言するのをやめようと思って法廷に見えたんですか」
麻原:「弁護人がそんなこと効くのがおかしいんだよ」
(法廷に失笑がもれる)

弁護人:「証言するかどうか、葛藤があるのですか」
中川:「それは常にあるんですけど」
(ここで、弁護人からいろいろ問い詰められる中川)

「地下鉄サリン事件についてもそうだったが、すべてを話したわけではない。
坂本事件に関してもどうしようかとおもっているところがある」
2時20分、「あなたがたは・・・・何を・・・」麻原がつぶやく、
テーブルを手のひらでバンバンたたく。絶え間なく動いている・・・。

その間も弁護人の説得が続いている・・・。

弁護人:「取り調べで検事が質問するしつこさと、私が質問するのとでは、
どちらがしつこいかなあ」
中川:「それはもう、比べ物にならないくらい・・・」
弁護人:「私の方がしつこい」
(と、言葉を引き取ると、法廷内に爆笑が起きた)
弁護人:「でもね、あなたには本当のことを証言してほしいんだよ。
ここは取調室よりは自由に話せると思うが」
中川:「それは、話しやすいと思う」と吐息交じりに応じる。
麻原:「何を聞いているのか。私は意見陳述したいんだ」
阿部裁判長:「弁護人の質問が続いているのだから」
麻原:「私が弁護人だ。私が麻原彰晃ですから」
尋問がおわり、ほっとした表情を見せる中川被告に、主任弁護人が
「ちょっと一つだけ」と申し出る。
座りなおす中川
弁護人:「この前も今日も、何か書き物を持ってきているけど、何に使うの?」
中川:「記憶が混乱しないように」

阿部裁判長:「ついでに聞くけど、さっきメモとっていたのは、何を書いていたの」
中川:「さっきはあの、時期を思い出すため。
それから弁護人が『こっちをむいてしゃべるように』といったのを、メモ取るつもりもなく
書いてしまいました。


法廷にどっと笑いが起きて休廷。(その後新実被告の証言になる)
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青沼陽一郎さんの動画で中川智正があまり登場しないので
麻原法廷に中川智正が出廷した時、どんな雰囲気になるのかと
その一つを毎日新聞の第28回法廷から引用してみました。

当時中川智正さんが書いたんじゃないかな?というメモを、
本人の書いた字を想像しながら昨日、復元してみました。



教祖は、中川が出てきたとき、明らかに意識しています。
中川に圧力をかけているのがわかります。
中川には圧力かければ、黙り込むのがわかるから。井上嘉浩とは違って。
おそらく中川が知っていることを話されるのが怖いから。
不規則発言も、「私が弁護人だ。私が麻原彰晃だ」と
まだ中川に対して、「教祖」であることを誇示するような態度をして
発言させないようにしているのがうかがえます。

毎日新聞の記者は、証言をしない中川被告に対して
「自分自身に対する有罪判決への恐怖感から証言しない」と書きました。
私も当時読んだなら、このあとに大阪府警の隠語である、「戒名」(罪名のこと)
が中川被告に与えられるのは無理だと思いました。

しかし、この人には「戒名」以上の何かがあるとは、当時はまだ感づいている人も
いなかったのではないか・・・。